I PINGUINI(イ・ピングイーニ) ー 水底から光をたどる
雨が降ろうが槍が降ろうが、大きな落とし穴が待ちかまえていようが、私たちはペンギンのように素足で歩むしかない。そこにまた親一人子二人が、必死で歩みを進めていた。
障害におちいったひとり親からは支援を召し上げる、というジゴクの落とし穴。不自由な身にさらなる重荷を負わされて足掻きながら、その声は、ついに悲惨の津波を食い止めた。これはそんな小さくて弱っちい親子の、知恵と冒険の物語。
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転勤族の父とともに、根を下ろす ‘地元’ を持てずに各地を転々とする子ども時代でしたが、年に二回、夏のお盆と冬の年越しには親族が集う時間がありました。
我が家は祖父の代からの「転勤族」で、私も父の転勤に合わせて、小学生の頃から転校を繰り返してきました。都会から田舎までさまざまな地域で過ごしましたが、根を下ろす「地元」は持てずじまいです。「障害ひとり親」、という現在の立場に至る前から、「転勤族の子ども」というマージナルな立ち位置から世界を見つめていたのかもしれません。
気づけば、真っ暗な水底で子どもたちとじっとしていた私は、名もなき「ひとり」からの小さな経験をもとに、国の法律を改善する運動を始めることになりました。
意図や予想の外側から、思わぬ転機がやってくることがある。それがいつ起こるのかは誰にもわからないけれど、世界が大きく動き出すような転機は、誰の人生にもきっと訪れる