汗と秋空 - 2022/09/12

朝は時空が歪む。起きてからムスメの園の支度をして、朝食食べて、洗い物して…とやるべきこと進めていたはずなのにどこかで時空が歪んで、なぜか出発がギリギリになる。家出る直前の「5分」の経過スピードは異常。だんだんと涼しくなってきたのに、この日も俺は園バスに間に合わせるためにムスメを抱えて坂道をダッシュして汗だくである。

土曜日に完成したばかりの乱視用メガネを着けて、ムスメ初登園の月曜日。色も柄も本人が選んでお気に入りのやつだ(フレームはピンクみがかかったパープルで、サイドには花柄)。お友達も先生もだいたいみな「かわいい!」と声をかけてくれたのだが、園バス乗り場で最初にムスメに気づいた年長の子からの声かけが「あー目悪くなっちゃたんだー」だったので、あぁ子どもはストレートだなぁ他意はないのだろうけどムスメ割と繊細だからこういう一言気にしちゃったりしないかなぁなどちょっと心の中で思ったのだが、夕方迎えに行ってから本人にその日の様子を聞いたら、運動会の練習もつけたままで大丈夫だったとか、お昼寝のときのつけはずしもバッチリだったとか、お友達にかわいーとかにあうーって言われたとか、ご機嫌な様子だったので、まぁほとんどは僕の杞憂だろう。ともあれ、これから彼女の日常のほとんどを共にする「道具」がわが家に加わったのだ。親の僕は自分の近視用メガネを雑に服で拭いちゃったりするやつなので、反面教師にしてほしい。

さくら会の川口さんに誘われ、東村山の株式会社コボリンさんを見学。一人ひとりの身体に合わせて、自由に柔軟に、電動で姿勢変更・姿勢制御を行える車椅子P-5をつくられている。とある方の調整の場に立ち会わせてもらった。ALSをはじめ身体の機能障害が大きい人にとっては特に、車椅子は単に「移動」の道具ではなく、食事や仕事などその上でさまざまな動作を行い多くの時間を過ごす「生活」の道具であるので、痛みが少なく臓器などを圧迫しない楽な姿勢で過ごせること、自分で好きなときに伸ばす、ねじる、傾けるといった調整操作ができるというのは、とても大きなことだと思った。

夕方、ムスメを迎えに行ってその足で近所の小児歯科へ連れていき、定期検診。帰りにおもちゃを一つ選んでもらえるのでムスメはウキウキである。虫歯もなく、歯も歯茎も健康な状態で問題なしと。先生も驚いていたが、まだ4歳なのに下の前歯がもう少しグラグラし始めていて、生え変わりが近いかもとのことだった。へー。普通に乳歯が抜けて生え変われば特に何も問題ないのだけど、乳歯が生えたまま後ろというか裏側から永久歯がニュって出てきて二枚舌ならぬ二枚歯状態になることがあって、そのときは乳歯早く抜いちゃわないといけないので、見えたら連れてきてくださいとのこと。へー、そんなことあるんだ。

行き帰りの道中、散歩中の犬とすれ違うときはムスメは僕の後ろに隠れ、道のギリギリ端っこまで距離を開ける。少し前に偶然ワンって吠えられた出来事があって(そのときは僕はいなくてツマと一緒だったので伝聞だが)、それ以来また吠えられないかと怖くなっている様子。僕も子どもの頃、実家のすぐ隣の家の犬に吠えられて以来、道路の反対側の歩道まで渡ってぐるりと迂回して帰宅するってことをやってたな。今朝のメガネのことを気にしたのもそうだろうけど、なんというか、痛みや恐怖、もっと言えばトラウマティックな記憶になりうる出来事、体験、に対して、自分のことでもないのに気を揉みやすい傾向がある気がする。痛い怖いことはしないで済むにそりゃ越したことはないのだが、ムスメはムスメであって、自分と違う人生を最初から歩んでいるわけであって、世界は偶然/リスクに満ちあふれていて、どんな刺激がどんな影響をもたらすかもわからないし、残るのか消えるのか和らぐのかもコントロールしようがないからな。

それにしても1日よく歩いたな。疲れたが、悪くない。