"ギャグ漫画家が上司の命令で「新人教育マニュアル」を作った"、というベニガシラさんのTwitter投稿漫画がよく拡散されていた。
まず①全体像を説明する、②いきなり難しいことではなく初歩から教える、③自分がやって見せ、相手にやらせ、評価する(口頭説明だけで終わらせない)、④定期的に声かけする、⑤段階を踏んで次の仕事へ…と、5つのポイントがまとめられている。
その中身自体は、新しく入ってきた人に仕事を習得してもらう上での鉄板ステップというか、特段不思議なことはない真っ当な内容なのだけど、「これ、当たり前のはずなんだけど、世の中意外とできてる人少ないし、自分も含めて、同じ人・職場でもできてる時・できてない時の差も出るよな」と考えた。
この漫画に描かれたことは、一つの基本の型というか、当然新人さんも一人ひとり違う人間だから、理解のスピードや方法も、習得のスピードや方法も異なる。なので実際は、上記のようなことを意識しつつも、相手の反応をみて、つど教え方や伝え方をチューニングしていくことが重要だと思う。
文書マニュアルだけでは意味が入ってきにくくて、図やフローチャートなど視覚補助が多い方が理解しやすいという人もいれば、逆に口頭説明(聴覚理解)の方がわかりやすい、という人もいる。1回で相手のいうことをトレースできる人もいれば、何回か繰り返す中で自分にしっくりくるリズムを見つける人もいる。
「学び手は常に正しい」という言葉が僕が携わる教育・発達支援の領域にはあって、伝える・教える側ではなくて学習者自身の側に立つことを重要視した言葉なのだけど、働く現場を見ていると、(自戒もあるが)やっぱりなかなか理想通りにいかないことしばしば。
それは結局、教える側の生存バイアスとか楽したい心性によるのだと思う。
やっぱり「(上司から見て)理解・習得の早い、要領のいいやつ」とか、「(教える側がこれまでやってきたスタイルに対する)適応力が高いやつ」というのは一定数いて、そういう人に対する評価は高くなりがちである。それは自分にとって都合のいい・可愛い存在だからではないか?ということを常に差し引いて考える必要がある。
「俺の若いときはさぁ、見よう見まねで習得したもんよ」
「いやー、もうちょっとできると思うんだよね、期待してるからあえてハードルを高くしててさ」
「彼はやっぱ優秀だよねぇ、すぐキャッチアップするし」
etc.
こういう発言が、学習者自身の反応とか、個々人の多様性とか、教える側である自身の適応力・提示の仕方に対するリフレクションなしに発せられているときにこそ、リスクが隠れているのだと思う。
学習者、新人、部下の立場からは教える側、ベテラン、上司に対するネガティブフィードバックって相当しづらいのだ。我慢することでミスマッチが表出しない、そのうち耐えきれなくなって…という事態も起こり得る。
自分のコピーを作ろうとしてないか?コピーになれないやつの可能性を潰してないか?これはいくら意識してもしすぎることはない…