閒(あわい)の住人が、今週観た/聴いた/読んだ/食べたものなどを、本人の紹介コメント付きでいくつか選出してご紹介します。
■観に行ったところ:世田谷美術館企画展「こぐまちゃんとしろくまちゃん 絵本作家・わかやまけんの世界」
ムスメもツマも大好きな絵本のひとつ『しろくまちゃんのほっとけーき』をはじめ、「こぐまちゃんとしろくまちゃん」シリーズで知られる、絵本作家・わかやまけんさん(1930-2015)の作品世界にふれる企画展「こぐまちゃんとしろくまちゃん 絵本作家・わかやまけんの世界」が世田谷美術館で開催されていたので、観に行きました(2022年9月4日までとのことです)。
ロングセラー「こぐまちゃんえほん」シリーズを描いたわかやまけん(若山 憲、1930–2015)。その創作と表現は驚くほどに幅広く、多彩です。優しく幻想的な絵に現代社会へのメッセージをのせたもうひとつの代表作『きつねやまのよめいり』、泣き虫だけれど一生懸命な「おばけのどろんどろん」シリーズほか、昔ながらの民話絵本や詩集への挿画など、原画や関係資料約230点によって、その豊かな作品世界の全貌に触れる初めての展覧会です。
わかやまけんさんが、言語がまだ未発達な小さな子どもでも、絵だけでお話を楽しむことができる「純絵本」を目指して作品をつくってこられたことを知り、「こぐまちゃんとしろくまちゃん」シリーズはまさにそれだなと感銘を受けました。こぐまちゃんえほんのためだけにつくられたインクを、その色の数だけ版をつくり一色一色刷っていく「特色印刷」での制作の様子も館内ビデオで観ることができましたが、これが本当にすごくて、出来上がりシーンで思わず拍手してしまいました(企画展の「みどころ」ページをぜひ)。
ゆうへい
■読んだもの:益田ミリ『47都道府県女ひとりで行ってみよう』
益田ミリさんの本は初めて読みました。現在でこそ人気があって何冊もの漫画やエッセイを出版しているミリさんですが、この当時(2003~2006年くらい?)は今ほど知られた存在ではなかったよう。
「日本には47都道府県もあるのに、全部行かないのはもったいない」という理由で、各都道府県を旅しはじめたミリさん。ひとり旅の経験もなかったのに、月1ペースで各地を巡り始めます。
1県目・青森では、面白さや楽しさを「誰ともわかちあえないのは淋しいものだなって思った」ミリさんですが、徐々にひとり旅のコツをつかみます。読んでいても、最初は本当に「この人は何をしにきたんだろう…」と思っていたのですが、ミリさん流のひとり旅が出来るようになってくると楽しく読めるようになりました。自分の出身地や今住んでいるとろ、行ったことがあるところなどに注目して読むのも楽しいです。
ミリさんは、旅先でも名物など食べずにスーパーで買ったお惣菜をホテルで食べたりするし観光地に行ってもお店に入るのをためらってしまったりすることも多くあります。そこに共感したりできなかったりして、読んでいて自分の気持ちに起伏があったのが楽しかった。文章が整いすぎてないのもいいところだと思います。普段、きれいな文章ばかり好んで読んでしまうのですが、この本で面白く思える本の幅が広がった気がする。
Kazuyoさんより
■観に行ったところ:「たくさんの愛を、ありがとう 追悼 瀬戸内寂聴展」
瀬戸内寂聴展とても良かった、源氏物語の絵が凄く良かった、絵の具をふんだんに使った日本画をまじまじと眺めるのは本当に良い時間……。横尾忠則が描いた川端康成や三島由紀夫などの人物画や、それらの人とのエピソードなんかも良かった。99年の生涯。無数の人に愛を注いできた。ほぼ一世紀の、時代がまるっと詰め込まれていたような展示だった。こうやって時代がまた一つ終わっていくのだなぁ、という実感。
もときさんより
■読んだもの:平野ワカ『天雷様と人間のへそ―平庫ワカ初期作品集― 』
平庫ワカさんの『マイブロークンマリコ』も凄く良かったけど、この人の初期作品集『天雷様と人間のへそ』も凄く良い。「ホットアンドコールスロー」というやつが好きだった。これは「マリコ」の後に書いたらしい。この作者が「死人を出さずに漫画が書けたのはひょっとすると初めてかも知れない」という言葉の意味を思う。作家にとって、何らかのトラウマめいたものの克服が終わった時、新しい世界が開けるのかも知れない。そんな予感すらある作品だった。
もときさんより