楕円の夢―2022年6月17日の日記

 寝ても寝ても、眠い。目覚めては寝、目覚めては寝を繰り返し、なんとか起き上がったとき時計は9時30分を回っていた。11時から新しい仕事の打ち合わせがあるので、それまでに終わらせねばならない仕事を考えると、ギリギリの時間帯である。からだは昨日の汗と汚れでべたべたのままだから、風呂にも入りたい。

 風呂桶に湯を落とし、平日のルーティンである事務仕事に取り掛かる。正直に言うと、今の私にとっては何の面白みもない作業だ。「ああ、やめたいなあ」という声が頭をよぎるけれど、食べていくためには欠かせない仕事だ。心を無にして、作業を終わらせる。

 気づくと、風呂桶から湯が溢れていた。静かに止め、風呂に入る。湯船に浸かる時間は長くない。だけれど、この短い時間が私のからだに与える影響は大きい。これを欠かしてはならぬ。これを欠かしてはならぬ。

 11時から新しいライティングの仕事の打ち合わせ。この仕事は地元で出会った友人が紹介してくれたもので、友人に感謝しているし、こうして関係を築いてこれた自分自身にもはなまるをあげたい気分である。

 お昼から2年ぶりのオイルマッサージへ。会社員の頃は、よくここに来ていたけれど、自営業になってからストレスが減ったのか、来る頻度がぐんと減った。いい傾向だと思う。足湯も、マッサージも、施術時に鳴らす鈴の音も、すべてが心地よく、自分のからだの輪郭を取り戻すような感覚がした。

 施術後、バジルのお茶を飲みながら、ふと寺尾紗穂の歌が聴きたいなと思う。ここ数日、彼女の歌ばかり聴いている。なかでも、「楕円の夢」が好きだ。

私の話を聞きたいの
ほんとはどちらもほんとのことなんだ
そんな曖昧を生きてきた
明るい道と暗い道
おんなじひとつの道だった
あなたが教えてくれたんだ
そんな曖昧がすべてだと
明るい道と暗い道
狭間の小道を進むんだ


 マッサージを終え、友人が店長を務めているカフェへ取材に向かう。ここは就労継続支援B型事業所で、最近リニューアルオープンしたばかりだ。私は友人のことが大好きだ。なぜなら、彼は等身大のままの私をいつも肯定し、応援してくれるからだ。彼の前にいると、私は私でいていいんだと思える。

 そんな彼の作るカフェは、彼のセンスが随所に光っていて、居心地の良い空間となっていた。数字を書き連ね続ける利用者さんのメモ、それはゴミ箱に捨てられていたものなのだが、友人はそれを拾って、きれいに額縁に入れ、店内に飾っている。それらを眺めながら、彼と話しながら、「私の居場所はここにもあったんだなあ」と感慨深く思う。

 人の居場所は、特定の場やコミュニティに限らず、一人と一人の関係性の間に、無数にあるものなのかもしれない。

 帰宅すると、頭痛がして吐き気がする。疲れたのだろう。心の危機が去った後、こうして少し後にからだに疲れがやってくるのはいつものことだ。ロキソプロフェンを服薬して横になる。

 夜は、友人の誕生日会でビアガーデンに行ってきた。曇り空の下、湿気た涼しい風が吹き渡って、市内を流れる一級河川を眺めながら、気心知れた友人たちと過ごす時間は、また一つ私を癒してくれた。


 時間が解決してくれる。そんなかけがえのない時間を、日々を、綴っていこうと思う。誰に届けるでもない日記を、また書いていこうと思う。