「結婚とか、しなさそうだったのに」
「よく言われるよ」
持って生まれた気質なのか、はたまた環境がつくった性格なのか、誰か特定の人や集団と、長期的にウェットな関係を結ぶという発想や動機に乏しく、愛とか絆とか血縁とか、そういうのはぶっちゃけ、よくわからない。
付き合いが続くも途切れるも、それは僕が決めることではないし、来るものを拒む理由も去るものを追う理由もない。
そう思って生きてきたし、今も概ね、そう思って生きている。
そのくせ、惚れっぽい。
恋愛という意味に限らず、その場その場で出会った相手にはものすごく影響されやすく、すぐに相手のことを好きになる。出来るかどうかはさておいて、その人のために自分が出来ることならなんでも頑張ろうって気持ちになる。
その上、気を遣う。
相手の期待に応えなきゃという責任感が自分の中で勝手に増幅して、しかもそれを複数方面に対して背負っていくものだから、理想と現実のギャップからしょっちゅう自己嫌悪に陥る。
「過剰適応だ」と妻にはよく言われる。減点法の男。
淡白なのに惚れっぽい。他人に期待したくないのに他人の期待には応えたい。
そんな矛盾だらけの「社交的な根暗」として色々こじらせながら生きてきました29年。振り返るとすり傷だらけの黒歴史で、とりわけ恋愛関係は長続きしない刹那的なものがほとんどだった。
わけですが、いつの間にやら結婚しておりましたと。自分でもびっくり2016年。みなさんいかがお過ごしでしょうか。
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3月に入籍して、10月の終わりに、式と披露宴とパーティーを開いた。
それは、「ささやかながら」などと表現したら失礼になるような、過分で、幸せな時間だったと思う。
色々と相談した結果、親族も含めた「ゲスト」の皆さん同士をお繋ぎできるような会にしようと、司会は新郎新婦、食事や引き出物はお世話になった方々から取り寄せたゆかりの品々で構成、テーブルも所属や関係性ごちゃ混ぜでお話しできるような形の披露宴を企画した。
(あれは嫌だこれは出来ないと、新郎がリベラルこじらせた結果でもある。式場の方にはずいぶん好き放題要望を聞いていただいたと思う)
夜のパーティーも、もうなんか友人みんな集合ーってな感じで、方方にお声がけした結果200人ぐらいの規模になっちゃって、みんなと代るがわる挨拶したり写真を撮ったり、またぞろ自分たちで司会をしたりと嵐のような時間だったけれど、とにかく楽しかったのを覚えている。みんな新しいお友達、できたかなぁ。
(これまたお店の人と幹事の友人にはずいぶんとお世話になった)
「いや、もうこの日本式の披露宴のしきたりからその成り立ちから意味わかんないし、そもそもこの結婚制度とかイエ制度とか…」
「あなたがその形式が嫌なら、やりたいようにやればいいじゃない。お世話になった人たちにご挨拶できれば私はどんな形でも良いし、型に囚われてるのはあなたの方よ」
「えー、でもほんと200人とか、会場大丈夫だろうか。ぎゅうぎゅう詰めで、楽しんでもらえなかったらわざわざ来てもらうのに申し訳ない…」
「あなたが会いたいと思う人に一人ひとり声かけたんでしょ。来てくれるって言うんだから私たちは全力で準備してもてなすだけじゃない」
一事が万事そんな調子で、高まったり落ち込んだりしながらの準備期間。3マス進んで一回落ち込む、みたいな誰にも頼まれていないのに謎の牛歩ルールですごろくを進めているようだった。
だけど、実際にその日を迎えて終わってみると、本当にとっても楽しかったし、みんなに来てもらえて嬉しかった。やって良かったと思える会だった。
僕はいつもそうで、何かが結実するまでの過程はうじうじする癖に、終わってみるとスッキリ満足するのだから調子が良い。
アラサーにもなってこの性格。たぶんそうそう変わるもんでもなさそうな気がするが、ごちゃごちゃと言いながらも結局は皆さんのお世話になるのだから、そろそろ腹を括ろうかなと思ったりもしている。これからもきっと、みんなに生かされていく。
*
僕が今、「ここにいる」こと
僕が今、妻と「一緒にいる」こと
僕があなたたちと、今もまだ「途切れずにいる」こと
それらはすべて結果でしかないから、理由や因果を問うてもわかるはずがない。未来にこの人たちと一緒にいられるのかも、わからない。
だけど、妻や友人や先輩や後輩、関係が結ばれた色んな人たちに対して、”今”自分が思っている気持ちは事実だから。その”今”が未来へと向かっているのなら、未来でも同じ時間を過ごしたいと思うのなら、そのことに対しては誠実でいなくちゃな、と思っている。
自分が選んできたことの意味、自分が大切にしている人やもののことを、一つ一つ確かめていくことは、「これから」を生きていくうえで、きっと大切なこと。
仕事のこと
暮らしのこと
妻のこと
友人のこと
いくつかのふるさとのこと
これからのこと
それから、ここ「アパートメント」のこと
久しぶりに自分の部屋を持って、色々と書き連ねてみたいと思います。
(〆切に追われながら)
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(友人の仲道萌恵さんにつくってもらった結婚指輪)
ウェブマガジン「アパートメント」当番ノート 第30期に掲載