うす紅に包まる(短歌15首)

駅前の大きなビルにも戦争が起こったことにも慣れるのだろう

意味なんてないさあるなら嘘っぱち 寝ぼけた人が見間違えたのさ

何もかもできるつもりで生きている すべてを言い訳にして生きていく

正解があるようなことを言う友と別れたいつかの遠い夏のこと

くろあげはひらめくみどりの生けがきにひかりのつぶが舞いいでて消ゆ

どこにでも行けるさみしさ屋久杉は二千年間その島にたつ

火星では手を繋いでた 地球では朝の光が透けて、寂しい

冷え切った腕で抱いた照葉樹 雪の明るさなんて知らない

ここにいて隣でわたしの手をとって笑ってみせてよねえクラムボン

哀しみを哀しみのまま果実とす夜よこのまま永遠に続け

うす紅の毛布にひとりくるまって小さな私を屈葬とする

運命に連れられてゆく旅だけど幸せなんて願えないけど

もう踊れなくてもわたしに朝が来ることを思いて霜柱踏む

着古したセーラー服にはセルリアンブルーの絵の具がついたままです

来世ではアコーディオン弾きになりたい いつかどこかであなたを見かける