15 春なかば

 宮崎の春は新玉ねぎの収穫と共にやってくる。わたしは植え損ねてしまったけれど、同じ市民農園のほかの畑には、新玉ねぎのねぎの部分がたくさん空に向かって伸びている。先日、息子と一緒に畑へ行ったら、隣の隣の畑を営んでいる人からおすそ分けをもらった。

 新玉ねぎはスライスして生で食べるのが一番おいしい。だけれど、その日は晩ごはんがキムチチゲだったので、それに入れて食べた。それもおいしかったけれど、やっぱり初物は生でいただくのが良かったかな、と少し悔いた。

 3月になると、春夏野菜を仕込む。今年もわたしはジャガイモ(メークイン)とラディッシュ。ラディッシュの種はどこでも手に入るけれど、種いもはいつも行くホームセンターでは売り切れていて、個人店で手に入れた。

 畝づくりは大仕事だ。土を耕し、クワで土を盛っていく。人に習ったわけではないから、どこで覚えてきたのか分からないなんとなくのイメージでやっている。隣の畑のようにきれいにはいかないけれど、いつかわたしもあんなふうにきれいな畝が作れるようになるだろうか。

 しかし、どんなに下手な畝でも植物は育つ。

 ラディッシュが発芽し、続けてジャガイモも芽を出した。わたしは、ラディッシュの収穫後にジャガイモの芽が出ると誤って記憶していていて、種いもを植えた上にラディッシュの種も撒くというずさんなことをしてしまった。それが悪かったのか当初ジャガイモの芽は一つしか出ず、続けて出てきた二つは心なしか小さい。それでも、ラディッシュに負けじと葉を伸ばす。

 育ち始めた春野菜の隣では、冬野菜(小松菜)の花が満開を迎え、散り、そして種へと変わっていく。市民農園の隣の区画では麦が気持ちよく伸びている。ある日、飛んでいるところはなかなか見かけないテントウムシが飛ぶところを見た。春もなかばである。