27 東京へ

 東京へ行くことにした。旅行ではなく、引っ越しだ。それに伴って市民農園は解約する。しかし、「土に呼ばれて」の更新を辞めるわけではない。揃えた畑道具も持っていく。

 延岡に限らず、地方には都市部からU・Iターンしてきた人がたくさんいる。その人たちの中には3.11をきっかけに東京に限界を感じたと話す人たちもいた。それでもわたしは東京へ行く。未知の場所へと向かう。わたしはわたしの目で東京を見、感じ、知りたい。

 引っ越し先は緑の多いまちで、新居の窓の向こうにはビワの木が生え、すぐ近くに緑地がある。少し歩いたら大きな公園もある。今使っている市民農園がないと土に触れられないわけではない。引っ越してしばらくはバタバタするかもしれないけれど、落ち着いたらプランター栽培でもなんだってできるだろう。

 延岡のまちは美しい。東京へ引っ越すことを決めてから、しみじみと思うことが増えた。空が広くて、わたしという小さな人間を大きく包み込んでくれるようだ。2年半ほど通ったこの農道も、わたしの心象風景として深く刻みこまれている。

 梅雨がくる前に花をつけていたナスやゴーヤ、ミニトマトは実を結んでいる。しばらく通わない間に生い茂った草の上にはショウリョウバッタが止まっている。写真は、茂みをかき分けて収穫した野菜たち。