10月30日(日)17:00-18:30(日本時間, Zoom使用)に、『バザーリア講演録 自由こそ治療だ!(イタリア精神保健ことはじめ)』の読書会を行います。
イタリアは、世界に先駆けて公立精神病院(マニコミオ)を廃止し(1978年にイタリア精神保健法が改正)、地域での精神保健サービス体制を確立した国で、その運動の立役者となったのが、精神科医のフランコ・バザーリア氏(1924-1980)だそうです。
「病院から地域へ」というスローガンと実践は、今では日本も含めて、だいぶ普及というか、実態や課題はどうあれ、ある程度社会的に共通合意の取れたビジョンになってきているとは思いますが、どんなテーマにせよ、オリジンというかパイオニア的な存在を知っておくというのは大事だなということで、この本を読書会で扱うことにしました。
本書は、1979年にバザーリア氏がブラジルのサンパウロとリオデジャネイロに招かれて行った講演録に、資料や解説が加えられた内容になっています。今から約30年前ということで、当時と現在の国際社会情勢や、精神障害に対する人々の認識や言葉遣いの違いは多少あれど(そのあたりは少し補足しながら読書会を進めるつもりです)、バザーリア氏がその実践、運動の中から紡いだ言葉の数々は今も色褪せることなく、現代を生きる読者の私たちが受け止めるべき課題や、学び活かすことができる知恵が詰まっている講演録だと思いました。
読書会に参加を希望される方は、以下の詳細確認の上コンタクトフォームからご連絡ください。
■扱う本 フランコ・バザーリア 著 , 大熊 一夫, 大内 紀彦, 鈴木 鉄忠, 梶原 徹 訳『バザーリア講演録 自由こそ治療だ!(イタリア精神保健ことはじめ)』, 岩波書店, 2017年10月6日出版
世界に先駆けて精神病院をなくし,開かれた地域精神保健を実現したイタリア.その改革をリードしたのが精神科医フランコ・バザーリアだ.ラディカルで人間味溢れる思想と実践の全貌が,自らの口から,聴衆たちの疑問や批判にも応えながら分かりやすく語られる.この国の精神保健の未来を描くために必要な知と技がここに!
目次:
はしがき (フランカ・オンガロ・バザーリア)
日本語版序文
どのようにして不可能を可能にしたのか(マリア・グラツィア・ジャンニケッダ)
第1部 治療と自由――サンパウロ講演
第1章 精神医療は自由の道具か抑圧の道具か
第2章 地域社会における精神医療チームの活動
第3章 精神医療施設についての批判的分析
第4章 公共医療における精神医療の統合
第5章 社会構造と健康と精神病
第2部 医療と権力――リオデジャネイロ講演
第6章 精神病院における権力と暴力
第7章 抑圧と精神病
第8章 科学と人間的欲求への犯罪視
第9章 国家権力と精神医療
第3部 もう一つの道――ベロオリゾンテ講演
第10章 ベロオリゾンテへの二つの旅
第11章 精神医療と民衆の参加
第12章 精神保健の取り組みにおける代替案
第13章 精神医療と政治――バルバセーナ精神病院
第14章 精神医療における「公」と「私」
解説 ブラジル講演は精神病院病ニッポンへの贈り物 (大熊一夫)
訳者あとがき (鈴木鉄忠・大内紀彦)
資料 「一八〇号法」とは何か
フランコ・バザーリア――その生涯と著作
■日時
2022年10月30日(日)17:00-18:30(日本時間)
最大19:00頃まで延長 途中入退出可
■参加方法
参加希望の方は、主催者・招待者にメール・メッセンジャー等でその旨を直接お伝えいただくか、コンタクトフォームにご連絡ください。オンライン通話ツール「Zoom」のURLをお伝えします。事前に以下、読書会の趣旨や運営方法をご確認の上、ご参加いただきますようお願いします。
■閒の読書会について
株式会社閒が主催する、クローズドの読書会です。参加者のみなさんのご関心をお聞きしながら、閒を運営する鈴木悠平と、分析的道徳哲学者の石田柊さんの2名で選書・企画しています。
■読書会のグランドルール
何を語ってもいい。語らなくてもいい。他者に質問された際も、答えられる範囲で答え、答えたくない場合は答えなくていい。
読書会内での発言・議論をもとに、個々人の思想・人格のジャッジメントや誹謗中傷を行わない。
自分以外の参加者が語ったことを、本人の同意なく外部に発信・紹介しない。
具体的なエピソード例示の際に、他者のアウティング・プライバシー侵害・誹謗中傷を行わない。
より具体的な実施・運営方法は次項の通りですが、基本的には、このグランドルールを理解・共有の上ご参加いただける方であれば、どなたも大歓迎です。職業や仕事の分野、専門性、当事者性etc.といった要素での参加要件はございませんので、どうぞそういった点でのご遠慮・躊躇はなさらずお気軽に!!
■読書会の実施方法・参加方法
本に書かれていること、それが書かれた背景や文脈、著者の意図、出版目的や想定読者像といったことを理解・推測する、つまり「本そのものを読み解く」姿勢は一定持ちつつも、多様な人が参加する「読書会」としてのダイナミズムも大切にし、楽しみながら対話をできればと思っております。
書籍の内容に対する質問や議論、感想の共有だけでなく、本を起点に、ご自身のご経験や関心に引きつけてエピソードをご共有いただいたり、別の話題に展開していったりすることも許容・歓迎しています。
…という趣旨のもと、以下のような運営スタイルを取っています。
本を読み終わっていても読み終わっていなくてもOK、まったく読んでいなくても参加可
ただし、発言量の平等性を最優先に置きません。主催者が適宜話を振りつつ、銘々に言いたいことを言うスタイル。話が広がったり飛んだりしながら、まとめすぎず、という感じです。
Zoomは、顔出しでも、アイコン・アバターでも、ビデオOFFでも、どれでもOK
口頭発声でも、チャット発言でも、両方使うでも、どんな発言方法でもOK
もちろん、聴いているだけでもOK。途中入退出もOK。
■アクセシビリティ・アーカイブについて
アクセシビリティ担保のために追加で必要なことがあれば、参加者からのご相談内容に応じて、可能な範囲の環境整備を試みます。例: UDトークでの文字起こし、手話通訳者の同伴など
読書会実施中のZoomは録音・録画します。チャット履歴も記録します。
①読書会に参加した方②読書会に参加希望したが、日程が合わず、アーカイブ視聴を希望された方③閒のSlackコミュニティ参加者(守秘義務同意済み)に限定して録画等データを共有します。
ZoomのアーカイブURLを、上記①②③の方にご共有します。アーカイブは1週間程度でZoomのクラウドからは削除します。ローカル保存をおすすめします。
アーカイブ映像はご自身での学習・振り返り用にお使いください。①②③以外の方への共有・拡散はしないでください。
■閒の読書会でこれまで扱った書籍
#1 デボラ・ヘルマン 著, 池田喬・堀田義太郎 訳『差別はいつ悪質になるのか?』(4・5・6章)
#2 デボラ・ヘルマン 著, 池田喬・堀田義太郎 訳『差別はいつ悪質になるのか?』(1・2・3章)
#3 青山拓央 著『幸福はなぜ哲学の問題になるのか』
#4 広瀬巌 著『パンデミックの倫理学』
#5 児玉真美 著『アシュリー事件』
#6 熊谷晋一郎 著『当事者研究 等身大の<わたし>の発見と回復』
#7 生島浩 編著『触法障害者の地域生活支援その実践と課題』
#8 矢吹康夫 著『当私がアルビノについて調べ考えて書いた本――当事者から始める社会学』(1・2・3・4章)
#9 矢吹康夫 著『私がアルビノについて調べ考えて書いた本――当事者から始める社会学』(5・6・7・8・終章)
#10 東畑開人 著『日本のありふれた心理療法 ローカルな日常臨床のための心理学と医療人類学』
#11 伊藤亜紗 著『手の倫理』
#12 トム・ニコルズ 著, 高里ひろ 訳『専門知は、もういらないのか 無知礼賛と民主主義』
#13 美馬達也 著『リスク化される身体 現代医学と統治のテクノロジー』
#14 ジョン・スチュアート・ミル 著, 斉藤悦則 訳『自由論』(斉藤訳は光文社古典新訳文庫 他の出版社からも複数訳書あり)
#15 堀正嗣 著『障害学は共生社会をつくれるか 人間解放を求める知的実践』
#16 石田光規 著『「人それぞれ」がさみしい 「やさしく・冷たい」人間関係を考える』
#17 宮地尚子 編『環状島へようこそ トラウマのポリフォニー』
#18 横道誠 著『イスタンブールで青に溺れる 発達障害者の世界周航記』
#19 樋口直美 著『「できる」と「できない」の間の人――脳は時間をさかのぼる』
#20 荒井裕樹 著『凜として灯る』
#21 磯野真穂 著『なぜふつうに食べられないのか 拒食と過食の文化人類学』
これまでの読書会をもとにした石田さんの連載記事もぜひご覧ください。