2回目の結婚記念日の次の日に、夫が腰を痛めた。普段夫は在宅でエンジニアの仕事をしており、私は自室で作業したり音楽を聴いたり友人と話したりしているので、退勤したタイミングでスマホに「退勤したよ!」等のLINEが飛んでくる。珍しく17時頃にLINEが来たので見てみたら、「頭痛と腰痛が酷いので退勤したよ」とのメッセージがある。少し心配になり、自室を出て大丈夫?と声をかけると「いてて、いてて」と言いながら腰痛を訴える夫の話を聴く。曰く、特に重いものを持ったりしたわけではないのに仕事中急に腰に激痛が走り、それから痛みがかなり酷い状態で仕事どころではなかったので退勤したとのことだった。
普段は私がご飯を作ってもらうことが多いのだが、今日みたいに夫がしんどい日は休んでいてもらうのが一番だと思い、キッチンに立って料理を作る。椅子に座るのも一苦労のようなので、私のクッションを貸し、遠くのものを取るときなどとにかく私ができることは何でも言ってねと伝える。いつもは食べ過ぎでしょと言って注意するデザートごはん(ご飯が終わった後に食べる白ごはん、夫のささやかな楽しみ)も、お腹を壊すからと注意するミルクレープアイスも食べていいよと言うと「今日はさとみん優しい」と言ってくれ、ご飯を終える。
そこからベッドに寝ころぶのだが、寝ころぶだけでも一苦労で痛そうだ。私が「姿勢を変えたいときは私手伝うからね」と言うと、「ちょっと横向きになりたい」と言われるので、抱きしめる形でよっこいしょと姿勢を変えるのを補助する。その間も夫は「いててて」と言っている。これはぎっくり腰かなぁ、割と重症だなぁと思いながら、「トイレに行きたいときは、起き上がるの手伝うからね」と伝える。しばらくして「トイレに行きたいな」と言われたので、これは介護とかで被介助者を抱え上げるアレをやらなければな……と思い、夫に上から覆いかぶさる形で抱きかかえる。が、お互いどこにどう力を入れたら起き上がれるかわからないので、そこでいったん静止してしまう。「私に手をまわしたところに力を入れてはい、せーの」と言うが、夫の体格と私の筋肉量的にうまく抱きかかえられず、「いててて」「いてっ」と夫が言うので、こりゃうまくいかないもんだと思いながら、「いてて」の状態から夫は何とかベッドから起き上がる。「他にもここはしんどいというときはない?」と尋ねると、「トイレの蓋を開けるときに痛いなぁ」と言うので、「トイレに行くときは教えてね」と伝える。「今日は至れり尽くせりだなぁ、ありがとうね」と言われて嬉しく思うも、心配なので翌日に整形外科の予約をとってもらい、その晩はおやすみと言って眠る。
朝起きると夫はもう起きてベッドから出ていて、「たーちゃん(夫)、一人で起きれたの?大丈夫だった?起こしてくれて構わないのに」と言うと、「一人で起きられたよ、壁づたいに歩いて行ったら平気だった」と言うので「そういうときは構わず起こしてよ!」とちょっと怒る。
予約していた整形外科に2人で行き、レントゲンを撮ってもらうと「筋肉の疲労からきているものでしょう。特段骨に問題はありません」と言われ、痛み止めとシップを処方してもらい、少しホッとする。
帰りに古びた喫茶店でオムライスとボロネーゼをお互いに食べながら、予期せぬ病気がもし夫を襲ったとき、私はいつでもいつまでも傍にいたいなとふと思う。今回は軽症でよかったけれど、これからの長い夫婦生活の中で怪我や病気はつきものだろうし、都度都度対応しながら、かと言ってあまり悲観しすぎず、軽やかにふたりのあゆみを進められたらいいなあと思う金曜の午後なのであった。